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吼える人

そのロボは、吼えていた。

そこにいる人に、そこを管理する企業に、苛立っていた。
外国の人と話しながら、日本人の態度に腹を立てていた。

自分の友人を邪険に扱ったと怒り、吼え、噛み付き、でも、爪は立てない。


私は、些細な疑問を投げかけてみた。
私にも噛み付こうとしてみせた。
牙を見せびらかし、口を大きく開く。

噛み付くのが本性ではなさそうに見えた。
本当は、暖かな気持ちを求めているように見えた。
同情ではなく、私もそう思っていたから。



怒っている時は、本当はとても悲しい。
相手に気持ちが伝わらないのが悲しい。
こちらの呼びかけに答えてくれないのが悲しい。

苛立っている言葉を誰も受け取ってくれないならば、もっと辛い。

誰でも良いから、どんな反応でも良いから、答えが返ってくるまで、大声で、叫んでしまう。
大きな声で叫んでしまうと、それは悲しみには見えず、怒りに見えるけど。

でも、本当はとても悲しい。


喧嘩できるってことは、相手がこちらを向いているって事。
その瞬間だけでも、自分の事だけを見てくれてるって事。
無視されるよりは幸せ。

でも、仲良くできるならその方がもっと良い。



噛み付きそうに喋りはじめたロボはいつしか、親身になってくれた友人を自慢していた。
友達の心配をしてるその人が、本当は一番もろいのかもしれない。
優しい言葉に、そんなに簡単に気を許しちゃ駄目だよ。

『本当は信じたいんだ』そんな態度が見え隠れする。
私の辛い気持ちに、一緒に愚痴をこぼし、同情し、嘆いてくれた。

キツイ言葉は、自分の周りに張り巡らした鎧。
ゼリーのようにプルプル揺れる頼りない心を、一生懸命守ろうとしている。
その弱さがきっと、そいつの可愛げなんだ。



「友達になろう」って、最後まで言えなかったけど。
照れくさいから、そんなのむず痒いもの。

言わなくても、きっとこの会話はずっとあいつの気持ちに残る。
私にも、残る。

  # by Emeraldmountain05 | 2008-02-23 00:03 | ◆ SL的呟き ◆

柔らかな

その手のひらの感触だけが、確かだから
その手のひらの温かさだけが、信じられるから

だからもう、私は大丈夫。


ささくれ立った心をそっと包み込む、感触
驚き、毛を逆立てて抵抗する私を抱き寄せてくれるから

その膝の上で、まどろんでみる。


いつだって
にんまりと、特大の笑顔をくれるから

温かい。

彼が。
私が。


気が付くと、笑っていた。

  # by Emeraldmountain05 | 2006-11-25 20:57 | ◇ 日常点景 ◇

再び

よろよろと歩き出してみる。
希望を抱えて。



陽射しが輝いていても、それが絶対では無いと気が付いているけど。



信じたい。
怖い。

信じたい。
別の誰かを。



違う未来を見たい。
いつかきっと、暖かで穏やかなどこかへたどり着けると、信じている。

  # by Emeraldmountain05 | 2006-10-02 21:45 | ◇ 日常点景 ◇

秋葉

狂乱の熱が去り、沈静の風が吹く。
私にとってそれは、新たな熱を呼び覚ます、前触れ。



優しげでいて、熱さを秘めた…
そっけなく見えて、興味津々の…



見てないようで、見ている。
欲しいのに、求めない。



欲しいから、遠ざける。
けれど、見ている。



尻尾の先が、ほんの少し左右に揺れる。
顔がソッポを向いているのに、耳がこちらを向いている。



聞いている。
気にしている。
いつも。



あなたを。
私を。

  # by Emeraldmountain05 | 2006-08-27 08:29 | ◇ 日常点景 ◇

ここの所続いていた暑い日々を、場の空気を洗い流すように。
昨日から降り続く、冷たい雨。

暑く晴れた日が続く時は、冷たい雨の日々が恋しくて
冷ややかな雨が降り続く時は、暖かな陽射しを思い出す。

 

降り出す数時間前、遠くからひたひたと寄せ来る風。
聞こえるか聞こえないかのギリギリの狭間の、そんなあたりから気配が忍び寄る。
雨の。

 

山の木の葉の、
原っぱの草むらの、
花の、
土の、
それらがない交ぜになった、懐かしい匂いが私の鼻に届く。

ずっと隠されていた秘密が明らかにされる時のような、
じれったくて、けど、待ち焦がれていた瞬間が訪れる。

 

降り始めた雨を見ていた。
雨が落ちてくる、その向こうの空を見ていた。

夜が明け、また雨を見る。
雨の向こうを見る。

 

見知らぬ誰かが通り過ぎる。
自分の意識が、その見知らぬ誰かの目線で周囲の風景を眺める。
見慣れた風景が、ふと、馴染みの無い鮮やかな色彩を帯びる。

 

人が、
風景が、
草花が、
何もかもが、色鮮やかなのに。
ここから外に、一歩踏み出すだけで良いのに。

 

私はまだ、ここにいる。
ここにいて、机の上で、自分が選んだ仕事をしている。
やんわりと、自分で自分をここに縛り付けている。

  # by Emeraldmountain05 | 2006-07-17 18:47 | ◇ 日常点景 ◇

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